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(2) 学ぶべき生命の機能(光プロトンポンプ)
イオンポンプは、与えられるエネルギーと運ばれるイオンの種類によって分類されるが、ここでは光エネルギー変換ポンプとしてのプロトンポンプを例にとり、メカニズムを整理する。
ある種のバクテリアでは、光エネルギーを直接H+の電気化学エネルギーに変換することができる。ここではバクテリオロドプシンと呼ばれる膜タンパク質がプロトンポンプである。

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図4-9 光プロトンポンプ

バクテリオロドプシンの反応中心であり光受容物質であるレチナールは7本の膜貫通ドメイン(A〜G)を持ち、このうち、Gドメイン中のリジン残基とシッフ塩基を介して結合している。このレチナールはポリエン鎖の13と14の間の2重結合がトランス型(オールトランス型)のものとシス型(13シス型)のものとがあり、光応答性を示す。オールトランスレチナールを結合しているシッフ塩基はプロトン(H+)化されており、光照射により13シス型に異性化することによりそのH+が離され、すぐ近傍にあるアスパラギン酸(Asp85)のカルボキシル基を介して細胞外に放出される。H+を失ったシッフ塩基は次に別のアスパラギン酸(Asp96)残基を介して細胞内からH+を取り込みオールトランス型にもどる。
Asp85とAsp96は双方とも膜貫通のCドメインにあるが、Asp85はレチナールより細胞外に位置しAsp96は細胞内に位置するためこのような一方向へのH+輸送を可能にしているのである。

 

 

 

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